「期待値プラス = 勝てる」だけでは不十分
期待値プラスの馬券を見つけても、それだけでは長期で勝てません。賭金額を間違えると、ほぼ確実に破産します。
これを防ぐための数学的なルールが ケリー基準 (Kelly Criterion) です。Stride AI の毎日の賭金もこの基準(の保守版)で決めています。
全額賭けるとどうなるか
こんなゲームを考えます。
期待値 = 300 × 0.5 + 0 × 0.5 = 150 円 → +50% プラス
持ち金 10 万円から「全額賭ける」戦略でやると:
- 1 回目: 10 万円 → 表 → 30 万円
- 2 回目: 30 万円 → 表 → 90 万円
- 3 回目: 90 万円 → 表 → 270 万円
- 4 回目: 270 万円 → 裏 → 0 円
3 連勝で 270 万円まで増えても、1 回裏が出れば全財産消失。これが「期待値プラスでも破産する」の正体です。
ケリー基準の式
1956 年に数学者 John Kelly が示した、長期成長率を最大化する賭金割合の式:
f* = (b × p - q) / b
- f*: 賭けるべき資金の割合 (0〜1)
- b: 当たった時の純利益倍率 (= オッズ - 1)
- p: 勝つ確率
- q: 負ける確率 (= 1 - p)
具体例: 競馬で計算
AI モデルが「真の勝率 15%、単勝オッズ 10 倍」と推定した馬を持ち金 10 万円で買う場合:
- b = 10 - 1 = 9
- p = 0.15、q = 0.85
- f* = (9 × 0.15 - 0.85) / 9 = 0.5 / 9 = 0.056
持ち金の 5.6% が理論最適。10 万円なら 5,600 円。これより多く賭けると破産リスクが急増、少なすぎると成長が遅くなる。
でもフルケリーは振れ幅が大きすぎる
理論最適でも、シミュレーションすると:
- 資金が半分になる確率: 約 33%
- 資金が 1/10 になる確率: 約 10%
理論的には正しいですが、実際に資金が半減する過程に 耐えられる人はほぼいません。途中で戦略変更や賭金引き下げが起きて、結果的に理論値を下回ります。
解決策: 分数ケリー
実用では理論最適値の半分、または 1/5、1/10、1/20 だけ賭ける「分数ケリー」を使うのが一般的:
- 1/2 ケリー: 賭金 50%、成長率はフルの 75% を維持 (コスパ最良)
- 1/5 ケリー: 賭金 20%、振れ幅小
- 1/20 ケリー: 賭金 5%、超保守。Stride AI が採用
Stride AI が 1/20 ケリーを採用する理由は、AI の勝率推定に誤差があること、複数レースに分散すること、精神的に運用継続できる安心感を優先するためです。
まとめ
- 期待値プラスでも、全額賭けると破産する
- ケリー基準で「ちょうど良い賭金」が数学的に計算できる
- フルケリーは振れ幅大、実用は分数ケリー (1/2 〜 1/20) が現実的
- Stride AI は 1/20 ケリー で長期保守運用
本記事の 完全版 (4,500字) は note で公開中。コインゲームの細かい計算、分数ケリーの成長率比較、株式投資への応用など詳細は note 版をご覧ください。